琉球の為朝伝説

私は20年前に日記をつけていた。その日記を約20ぶりに読み返してみた。つけていた期間は1988年の7月18日から12月24日まで。ほとんどの出来事を映像として思い出すことができない。まるで自分ではない赤の他人の日記を読んでいるようだった。今考えると日々の日常生活の記憶ははかなく消えていく運命にあると実感している。実際に起きていたことがただの夢であったかのように、まるで何もなかったかのように。
今私は沖縄に住んでいる。住み始めて丸一年が経った。ここに来た理由は沖縄のことをよく見て体験し理解するためだと感じている。そして多くの人に理解してもらうことだ。ここで起きたことを。
沖縄には源為朝が流れ着いてそこで授かった子が琉球王朝の最初の王(瞬天)となったという伝説がある。源為朝とは平安時代末期の武将で12世紀の人物だ。向象賢(羽地朝秀)によって編纂された中山世鑑琉球王国の初めての正史)にそのことは記述されている。ちなみに俗説として沖縄で朝という文字がつく男子は為朝即ち瞬天の子孫だというのがある。実は私もその一人である。ここで沖縄の地名についておもしろい説がある。琉球とはもともとは為朝が流れ求めた地であり『流求』と書き改めたという。(それ以前は流虬)それから為朝が運に天にまかせて漂着した港を運天としたり、為朝と別れた妻が帰りを待っていた港を待港(今の牧港のこと)と呼んだなど。どれも伝説であり信憑性はないが実際にしっている地名の由来について話を聞くことはおもしろい。