尊敬に値する人

私の父はほとんど友達がいない、というかまったくいない。することといったら、家でテレビを見ているか、外で散歩するかである。常に自分のしたいことをしているという感じである。定年をずいぶん前に迎えて、これといった社会的な活動をしていない。特に趣味もない。なにか特技があるわけでもない。だが、私はたぶん自分の身近な人の中では、父を一番尊敬している。なぜだろう。それは、父は自分を生きているからだ。誰に迎合するわけでもなく、誰に気を使うでもない。ただ自然に自分を生きているのみである。そんな、父は実に偉大な存在にすら感じてしまうのである。